文化庁芸術創造特別支援事業

村田喜代子 原作(「蕨野行」文藝春秋刊より)
北林谷栄 脚色/ 米倉斉加年 演出 

蕨野行(わらびのこう)

1999年3月 9日(火)→3月29日(日)横浜・関西・岐阜・浜松
1999年4月15日(木)→5月1日(土)紀伊國屋ホール
1999年7月24日(日)→7月29日(木)福井県各所



 『粉本楢山節考』『黄落』などを脚色・主演し、
人間の老いと死を明るく自然に見つめて大きな感動をよんできた北林谷栄が、
こんどは芥川賞作家・村田喜代子さんの、遠野に取材した珠玉作にいどみます。

北林谷栄のエッセイ「八十八齢春秋」へ


ものがた


 レン ヌイよい。残り雪の馬が現れるなら、男衆の表仕事の季節がきたるなり。

 ヌイ おばばよい。したがおめに物問わんか。
    このごろおばばは朝に夕に鋸伏山を眺めて有るが、何とせるよい。




 



 庄屋の古かかレン(北林谷栄)は、きめられた年齢に達してワラビ野へ行くことになります。
 ワラビ野は里のものは入れぬジジババの野。
 食べ物はなく、ワラビたちは里へくだって田仕事を手伝い、その日の飯にありつくのです。


 一日休めば一日飢える。弱い年寄りは命がもちません。
 数年に一度はくる凶作に若者子供をやしなうために、こうして老人をふるいにかける昔ながらの姥捨ての知恵でした。


 




 ジジババ九人が襲いくる呆気とたたかいながらその日その日をおくるのですが、一人逝き、二人逝き、三人逝き……


 けれどもレンは、ふたたび生まれるため赤ん坊になって若い嫁ヌイ(中地美佐子)の腹に宿るのでした……。



各誌劇評

・・・九人の「ジジ」「ババ」が自分たちの力でその力でその日の糧を得ようとする姿が描かれているのだ。一般的に流布している棄老伝説とは違うのである。したがって舞台には、老人たちの生きるエネルギーの表現がのぞまれるのだが、ドラマの進行を示す北林の澄んだ朗読を背景にして、俳優陣はそれぞれの柄を生かしている。口減らしのためにワラビ野に入った老人たちの生活ぶりが、いきいきと示されているのである。
・・・(中略)・・・若々しいひたむきな嫁の胎内に、レンが赤子となって宿るというドラマの結末は、見るものに問題を深くなげかけてくるのである。劇化を実現した北林谷栄に拍手を送りたい。
                                              
(菅井幸雄 4/21 赤旗)


 いい意味で不思議な舞台だ。昔、ワラビ野に棄てられた9人の老人たちの話なのだが、主役のレンを演じる北林谷栄だけは現代の服のまま朗読する。棄老の物語を過去に閉じ込めずに、現代につなげようとする米倉斉加年の演出なのだろう。北林の存在感がそれを可能にして、充実した聴く芝居なっている・・・(中略)・・・ワラビ衆の俳優もいいが、レンの思いを心身とも引き継ぐ嫁ヌイの中地が抜擢に応えた好演だ。                                     
(高橋豊 4/26 毎日新聞夕刊)


 
  


                         

スタッフ

原作 村田喜代子
脚色 北林谷栄
演出 米倉斉加年
装置 内田喜三男
照明 山内晴雄
音楽 林 光
効果 岩田直行
衣裳 金田正子
舞台監督 尾鼻 隆
演出助手 上野日呂登 三木繭美
照明助手 尾藤俊治 前田照夫
美術助手 深川絵美
効果助手 吉原 敦
制作 金本和明 中村起子

キャスト

レン 北林 谷栄
ヌイ 中地美佐子
団右衛門 千葉 茂則
伊作 宮廻 夏穂
テラ 細川あゆみ 松田 典子
馬吉 内藤 安彦
甚五郎 今野 鶏三
留三 山梨 光國
マツ 久保まづるか
チヤ 披岸喜美子
トメ 浅野 亜子
トセ 田畑 ゆり
祈祷師 助川  汎
弥十郎 齊藤 尊史
女房 水谷さやか 花村さやか
セキ 松田 典子 細川あゆみ
庄三 助川  汎
亡児男 齊藤 尊史

原作者

村田喜代子(むらた きよこ)

 福岡県北九州市八幡出身。1960年著者自身のタイプ印刷による個人誌「発表」を創刊。
1962年「鍋の中」で第97回芥川賞を受賞。1990年「白い山」で女流文学賞。1992年、「真夜中の自転車」で平林たい子賞。1998年「望潮(しおまねき)」で第25回川端康成文学賞受賞。今年「龍秘御天歌」で芸術選奨文部大臣賞受賞。著書多数。
「蕨野行」は1994年文藝春秋社で刊行。


舞台を終えて…
一歩ずつ歩いた舞台      中地美佐子(ヌイ役)

 はじめて『蕨野行』を読んだとき、心が震えた。
 この愛しい人々を台本からぬけ出させ、舞台の上で生きて欲しい!と願った。それを見たいと思った。
 私の探し求めていたものを見つけたような、興奮で眠れない夜だった。

 あの夜から今日まで長〜い道のりだったように思う。みんなで創ってゆくことが芝居のよろこびだけど、それぞれの仕事はたった一人の、孤独な作業だ。ヌイさんを任された私は、とたんにまっ暗な道に放りだされたようだった。

 不安と恐怖、自分の力のなさでもう一歩も足がでないときが何度もあった。

 そんなとき、私を背中からそっと押してくれる力を感じた。仲間、家族、何度も好きで観た映画、感動した本、会いたい人…私の心のなかで大事にしてきたものたちだった。見えない力に押し出され一歩ずつ歩いた。

 なかでも一番大きな力を北林谷栄さんからいただいたと思っている。何十年もの長い道のりを歩きつづけている背中。いま、一番大事なことをじっと見つめている目。稽古場でその目を見ていると、私の心は落ちつき、一つに集まった。レンさんの言葉を頼りに、毎日舞台へと向かった。

いつのまにか千秋楽を迎えることができていた…。

 『蕨野行』の仲間と別れ、また一人私はトボトボと歩いてゆく。
 また立ち止まってしまったときには北林さんのあの目を思いだそう……。
 まっすぐ前を見て歩いてゆける気がする。


東京公演日程

4月 15 16 17 18 19 20 21 22 23 24 25 26 27 28 29 30 5月
 
1:30       休演    
6:30                        

1999年4月15日(木) → 5月1日(土)
 紀伊國屋ホール(新宿東口)
 前売開始 3月1日

■入場料
   一般 6、000円(+消費税300円) 学生4,500円(消費税込) 中高生3,150円(消費税込)
   

■お申し込み・お問い合わせ

 劇団民藝 п@044−987−7711
           プレイガイド
     チケットぴあ 03-5237-9999・9988 チケットセゾン 03-5250-9999
     CNプレイガイド 03-5802-9999 ローソンチケット 03-3573-1012・03-3569-9900
     紀伊国屋インフォメーション (新宿東口店頭販売のみ)

  


福井県下縦断公演

公演日 開演時間 公演地 会場 主催 後援 プレイガイド
7月24日(土) 18:15 鯖江市 鯖江市文化センター 福井新聞社・鯖江市文化事業協会 福井県・鯖江市・福井県教育委員会・鯖江市教育委員会 鯖江市文化センター・アゼリア・アルプラザ平和堂鯖江店・シピィ(武生市)
7月25日(日) 18:15 小浜市 小浜市文化会館 福井新聞社・小浜市文芸協会 福井県・小浜市・福井県教育委員会・小浜市教育委員会 福井新聞小浜支社・小浜市文化会館
7月26日(月) 18:15 福井市 福井市文化会館 福井新聞社 福井県・福井県教育委員会 福井新聞社事業局・だるまや西武
7月28日(水) 18:15 宮崎村 越前陶芸村文化交流会館 福井新聞社・宮崎村 福井県・福井県教育委員会 越前陶芸村文化交流会館・メルシ内廣比書店(織田町)・シピィ(武生市)
7月29日(木) 18:15 大野市 大野市文化会館 民藝「蕨野行」公演大野市実行委員会(共催:大野市・大野市教育委員会・福井新聞社) 福井県・福井県教育委員会 福井新聞大野支社・大野ショッピングセンターリブレ

■入場料(どの会場も)
   前売り券  S席4,000円・A席3,500円
   当日券   S席4,500円・A席4,000円
           ※宮崎村公演のみ一部自由席あり
  

■お問い合わせ

 福井新聞社 事業部
 0776-25-8114



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