1992年4月6日、早朝。 旧ユーゴスラビアのボスニア、「セルビア人共和国」。 とある農夫夫妻とその次男が暮す家に義妹夫婦とその娘が避難して来る。 「セルビア人民兵に町を追われた」と言う。 教師だった農夫の父が第二次大戦中、 臨時の教室にしていた地下室に義妹一家が身を隠したところへ、彼の長男の伝言を携えた嫁がやって来る。 「この地下室をクロアチア人とムスリム人勢力に対するセルビア人自警団の本部兼弾薬庫にする」と。 図らずも狭い地下室で、今やそれぞれの民族の名前を背に、顔を合わせた家族たち。 多民族共存のモデルケースとさえいわれたボスニアは 今や「隣人殺し」とさえ言われる凄惨な民族紛争の渦中にあり、この地下室はまさにその縮図だった。 家族めいめいが、相互に抱く不信、恐怖、憎悪、愛情。 対独戦終了間際のあの日、教師だった父が、臨時の教室だったこの地下室で出した宿題… 「クロアチア人はどうして我々セルビア人を虐殺するのか」 解かずじまいのあの宿題、 歴史の彼方へ置き去りにして、忘れてしまったあの宿題の解答は、出題の意図は何だったのか。 「忘れん坊は、騙される。すぐにころりと騙される」 宿題に取り組まなかった報い、歴史に学ばなかった報いが、 いま、家族を引き裂き、かけがえのないものを打ち砕いていく。
作者/平石耕一(ひらいし こういち) 1955年(昭30)博多生まれ。日大獣医学部卒業後、東京芸術座へ入座。『橙色の嘘』が1992年度文化庁舞台芸術創作奨励特別賞を受賞。劇作家として一躍注目を集める。文化庁在外研修で一年間の英国留学をへて、帰国後、次々と新作を発表し各劇団で上演。家族を中心に、人と人との繋がりを見つめつづけ、暖かく透明感のあるドラマをつくっている。代表作は『橙色の嘘』をはじめ、『ブラボー!ファーブル先生』『センポ・スギハァラ』(演出も)がある。最近作は『ゆの暖簾』『ホームワーク』『月下』『湖上』『家路』など。 劇団民藝には1999年、産業廃棄物問題を扱った『湧きいずる水は』を書き下ろしている。 【日程(ダブルキャスト)】
※各回定員100名様限りのため、お申し込みはお早めにどうぞ。 【入場整理券】(日時指定・全席自由) 1、500円 【お問い合わせ・お申し込み】お電話でお願いいたします 劇団民藝 044−987−7711 〒215−0035 川崎市麻生区黒川649−1地図 |
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